「風をつかまえた少年」、テレビ放映を見て思うこと

 先週の日曜日(2011/02/06)にテレビ東京の「池上彰の世界を見に行く」という番組の中で、アフリカの天才少年として独学で風力発電を作ったウィリアム・カムクワンバ氏のエピソードが取り上げられてました。彼の独占インタビューを交えながら、マラウイという国について3時間番組の中で約1時間取り上げられました。私も入手して観ましたが、マラウイで生活しているものとして非常に興味深いものでした。

 彼のインタビューを聞いて、私が最も共感したのは以下のところです。彼は14才のときに中学校の学費を払うことが出来ず学校を退学することになってしまったのですが、彼は

「私が嫌だったのは、学校をやめてやることがないから農民になることでした。もしトウモロコシの値段が上がったりすればまた大きな災難に巻き込まれる。私は人生に選択肢を2つ以上持っていたい。そうすれば何をすべきで何をすべきでないか分かる」

と言っています。私は途上国で活動をしていて一番気の毒なことだと思うのは「選択肢が無いこと」だと思っているので、彼の言葉を聞いたときに、素直に共感しました。アフリカに限らず途上国の現状を見て、よく日本人の方が、田舎などに訪れ、子供たちの笑顔を見て、「本当の豊かさとは何かわかった気がする・・・」といった話を聞くたび、えっ、と思います。途上国で活動していた人でも言うのでホントにびっくりします。私たちが途上国に協力出来ることは、彼らに選択肢を作ることが出来るようにすることだといつも思っています。選択肢がない状況がどうして豊かなのでしょうか?

 もう一つ、このテレビ放映を見て感じたのが、貧困を強調しすぎてもう一つの面が見落とされていることです。たしかにマラウイは1日1ドル以下で暮らしている貧困層が約4割いるのも事実なのですが、一方で、都市部では、その10倍以上の収入を得て暮らしている人たちもいるのです。私のウェブサイトでも取り上げましたが、都市部の生活費は、月当りの生活費がリロングウェが332ドル、ブランタイアが340ドルとなっているそうです。月当りですから年間にすると4,080ドルとなります。この貧富の格差が本質的な問題です。

 国家予算が1,500億円でその約4割がドナーから援助で成り立っているにも関わらず、昨年はムタリカ大統領が約12億円の専用ジェット機を購入し英国などから厳しく非難されています。ムルジ前大統領は、大統領時代にドナーからの援助金を17億クワチャ(1100万ドル、約11億円)個人口座に着服した汚職容疑で2006年に逮捕されています。

 こうした体質、構造を変えない限り、問題解決の糸口が見えてきません。日本では「アフリカの貧しい子供たちに・・・」とすぐにキャンペーンをしそうですが、少なくともモノやお金を寄付することでは何も変わらず、モノは市場に横流しされて売られ、お金は誰かの懐に入るだけかもしれません。